イレッサ 間質性肺炎 サイトカイン

イレッサで間質性肺炎が起こるメカニズム

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イレッサの副作用で間質性肺炎が誘導されるメカニズム

 

イレッサ(ゲフィチニブ)は活性化型変異のEGF受容体の機能を抑える分子標的医薬です。

 

したがって、そのようなEGF受容体の突然変異を持つ癌細胞が主体の肺腺癌患者さんには劇的に奏効することがあります。

 

しかし、問題点は3%〜6%の患者さん(報告により異なる)で、間質性肺炎が発生して、使用を中止せざるを得なくなることにあります。

 

 

間質性肺炎は肺の間質といわれる部分の繊維芽細胞という間質細胞がどんどん増殖し、コラーゲンなどを過剰に作り出して「線維化」と呼ばれる状況を生み出し、肺を固くして呼吸困難に落とし込んでしまう疾患です。

 

放置して増悪させるとあっという間に命を落とす疾患ですから、医療側としてはただちにイレッサの使用を中止して間質性肺炎そのものを治すことに注力せざるを得ません。

 

医療側としてもこれの発生をどうにかして抑えたいと考えながらイレッサを使っています。

 

 

もしもイレッサの副作用で間質性肺炎が誘導されるメカニズムが解明されれば、それを抑えるような治療方法を併用することでもっと安全に、長期間にわたってイレッサを使い続けることができるはずです。

 

その目的で様々な人たちがその研究をしていますが、2013年の初めに報告された研究論文に興味深いものがあります。

 

Oncotargetという医学論文誌に掲載された以下の論文です。

 

 

Oncotarget. 2013 Apr;4(4):550-9.

 

Epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibition up-regulates interleukin-6 in cancer cells and induces subsequent development of interstitial pneumonia.
Ishiguro Y, Ishiguro H, Miyamoto H.
Source

 

Department of Biology and Function in the Head and Neck, Yokohama City University Graduate School of Medicine, Yokohama, Kanagawa, Japan. yukariishiguro@gmail.com

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23592411

 

 

具体的にどのような内容かというと、EGF受容体の突然変異を持つ培養がん細胞にイレッサを振りかけると細胞の増殖は止まり、抗腫瘍効果は発揮するけれども、同時にIL-6というサイトカインを大量に放出するというものです。

 

IL-6というのは炎症性サイトカインと呼ばれる分子の一つで、これは繊維芽細胞を刺激してコラーゲン産生などを誘導し、線維化を進めるサイトカインであることが知られています。

 

(膠原病の患者さんで間質性肺炎が進む理由のひとつが自己免疫反応により炎症性サイトカインが多量に産生されることにあると考えられています。)

 

 

この研究結果は、患者さんの体の中でもイレッサでたたかれたがん細胞が死ぬ間際に大量のIL-6を放出している可能性を示唆します。

 

それが周囲の間質の繊維芽細胞を刺激して線維化を招いている可能性があるという仮説につながります。

 

ですから、研究者たちは、イレッサやタルセバを投与するのと同時に、IL-6受容体機能阻害剤などを投与してIL-6による繊維芽細胞刺激を抑えておけば間質性肺炎発症が抑制できるのではないかと提示しています。

 

 

実際に、IL-6受容体の機能阻害剤はリウマチ治療薬として販売されています。

 

今すぐにそれが使えるというわけではありませんが、治験として「EGF受容体の機能阻害剤+IL-6受容体の機能阻害剤」を同時に投与するという試みは考えてみてもいいのかもしれませんね。

 

 

ちなみに、IL-6受容体は癌細胞にも発現しているので、イレッサでたたかれたがん細胞がIL-6を産生して自分のIL-6受容体を刺激して生き延びる、というメカニズムも想定されています。

 

(癌細胞としてはそちらが目的で、間質性肺炎を誘導するためにIL-6を産生しているわけではない、というわけです。)

 

その意味でも、「EGF受容体の機能阻害剤+IL-6受容体の機能阻害剤」という組み合わせは癌の増殖を抑える治療法として魅力的ではあります。

 

 

 

最後に。

 

上述の内容は市中の医者の個人的な推測であり、そのような治験計画が進んでいるのかどうかは存じ上げておりませんことをお断りしておきます。

 

 

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