イレッサ 間質性肺炎 免疫細胞

イレッサ誘導性間質性肺炎と免疫細胞

スポンサードリンク

線維芽細胞が刺激されるだけでは間質性肺炎は起こらない?

 

ここまでにいくつかの記事でイレッサ投与により間質性肺炎が起こるメカニズムについて考察してまいりました。

 

1.EGF受容体の機能を抑えられたがん細胞が生き延びようとしてIL-6を出して線維芽細胞を刺激してしまうのが原因かもしれない。

 

⇒ イレッサで間質性肺炎が起こるメカニズム

 

2.もともと間質性肺疾患を起こしやすい遺伝素因を持つ人が日本人では数%〜10%存在する。

 

⇒ 間質性肺炎が起こりやすい肺がんのタイプ

 

その人たちが肺がんになったときに、「癌のEGF受容体のパワー」が足りないとIL-6が産生されるので間質性肺疾患になるのではないか、というわけです。

 

 

ただ、これだと、登場してくる細胞と分子は

 

「癌細胞」と「線維芽細胞」、そして「EGF/EGF受容体」と「IL-6/IL-6受容体」だけですよね。

 

でも、ステロイドを投与し続けることで間質性肺炎発症を予防できるという論文も紹介しました。

 

⇒ ステロイドの同時投与で間質性肺炎発症を防ぐ

 

 

さらに言えば、ゲフィチニブ投与で発症した間質性肺炎の治療としてはメチルプレドニゾロンの大量投与(パルス療法)が選択されます。

 

これで速やかに症状が改善するケースが少なくないのがゲフィチニブ誘導性間質性肺炎の特徴でもあります。

 

さらに、パルス療法の効きがいまいちの場合、シクロスポリンという薬を追加投与することで症状が改善することもあります。

 

 

ステロイド大量投与や、シクロスポリン追加投与が何をやっているかというと、免疫細胞の機能を抑えて免疫抑制をすることがお仕事です。

 

免疫細胞というのはリンパ球やマクロファージなどの白血球のことで、これらの機能を抑えるのです。

 

たとえば、ステロイドがアトピー性皮膚炎の人で使用されるのは、皮膚で発生している行き過ぎた免疫反応をお一時的に抑えるためです。

 

 

これらの白血球による免疫反応も、イレッサで発症する間質性肺炎の発生や進行に深くかかわっているのです。

 

これは、パルス療法が有効であることからもわかりますね。

 

でも、間質性肺炎の中にはステロイドが有効でない肺線維症というものもあって・・・わけわからないですよね、医者でもそうです。

 

 

そこで自分自身の勉強もかねてのおさらいです。

 

ゲフィチニブで誘導されるのではない、一般的な間質性肺炎にはどんなものがあるのでしょうか?

 

「間質性肺炎」と、一口で言っても病態がいろいろあり、おおざっぱには7つに分類されます。

 

 

・・・詳細は次の記事で。

間質性肺疾患の分類とイレッサ誘導性間質性肺炎

 

間質性肺疾患に関して

 

厚生労働省の難病に関するホームページから抜粋した定義を以下に転載します。

 

間質性肺炎とは、広くびまん性肺疾患として胸部放射線画像上両側びまん性の陰影を認める疾患のうち、肺の間質(狭義では肺胞隔壁、広義では小葉間間質、胸膜近傍などを含む)を炎症の場とする疾患である。その病理像は多彩で、職業性や薬剤など原因の明らかなものや膠原病随伴性に起こる場合と、原因が特定できない場合がある。特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias; IIPs)は原因を特定しえない間質性肺炎の総称であり、下記7疾患に分類される。

 

1)特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)
2)非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)
3)特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia:COP)
4)呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患(respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease:RB-ILD)
5)剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia:DIP)
6)リンパ球性間質性肺炎(lymphocytic interstitial pneumonia:LIP)
7)急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia:AIP)

 

 

さらに大雑把には、炎症が徐々に徐々に進む「特発性肺線維症(IPF)」と、そのほかの6種類、という分け方と考えていただいてよいです。

 

どうしてこういう分け方をするかといえば、IPFではステロイド療法がほとんど無効であるケースが多いのに対して、ほかの間質性肺疾患ではしばしば奏効するからです。

 

また、特発性肺線維症と診断されていた人で、感冒やインフルエンザ感染などの呼吸器感染症がきっかけとなって急速に症状が進むものがあります。

 

これを「間質性肺炎の急性増悪」と呼びますが、このときにも免疫抑制療法であるパルス療法が「増悪した分を抑えることに関しては」劇的に効く場合があります。

 

 

イレッサに誘導されて起こる薬剤性間質性肺炎(肺がんも絡むのでシンプルに薬剤性とは言えませんが)は、分類(7)の急性間質性肺炎、あるいは(1)の特発性肺線維症の急性増悪のような病態であると考えるので良いと思います。

 

(7)に近い場合はステロイドが著効して改善します。

 

もともと、潜在的に(1)のIPFの病態がある方の場合は、一時的には良くなる可能性はありますが、なかなか治らないと思います。

 

 

 

ということで、イレッサにより誘導された間質性肺炎では、おそらく、「線維芽細胞の線維化」だけでなく、「免疫細胞の活性化」も同時に起こっています。

 

そして、免疫細胞の活性化による症状が主体の場合にはステロイドでコントロール可能です。

 

 

実は、IL-6は免疫系の細胞を刺激して、特に自己免疫性の炎症を急速に進行させる効果があることもよく知られています。

 

ゲフィチニブでEGF受容体の活性化を阻害されたがん細胞がIL-6を産生することがこの副作用の間質性肺疾患の基盤にあるのだとすれば、興味深いです。

 

イレッサで誘導されてしまった間質性肺炎の治療法として、IL-6受容体の機能阻害剤を投与する方法はこれから真剣に検討される価値が高いのではないかと考えます。

 

 

 

以下は厚生労働省の難病ホームページからの抜粋の一部

 

(注)AIP

 

本邦ではAIPに対し、ステロイド大量療法(パルス療法:メチルプレドニゾロン1,000mg/日の3日間点滴静注を)を病状の安定化が見られるまで1週間間隔で3〜4回投与されることが多い。また、大量療法後にも画像上陰影が残存し、肺機能障害が十分に改善しない場合にはIPFに準じ、ステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法を行う。またシクロフォスファミド(CPA)大量療法(500mg/日、一回/2〜4週毎)やシクロスポリンが有効とする報告もある。ステロイドや免疫抑制剤の大量療法が継続する場合に、薬剤固有の副作用に加え、感染症の合併には十分な注意と対策を要する。重症呼吸不全に対しては酸素療法や人工呼吸器管理が必要とされる。

 

スポンサードリンク

イレッサ誘導性間質性肺炎と免疫細胞関連ページ

イレッサで間質性肺炎が起こるメカニズム
イレッサでどうして間質性肺炎が起こってしまうのか、それはEGF受容体機能を抑え込まれた肺がん細胞が生き延びるために大量生産するサイトカインにあるかもしれない
ステロイドの同時投与で間質性肺炎発症を防ぐ
イレッサ、タルセバで引き起こされる間質性肺炎、これの発症を抑えながら使い続ける方法についての考察です。
間質性肺炎が起こりやすい肺癌のタイプ
分子標的医薬であるイレッサ、タルセバで引き起こされる間質性肺炎、でも、肺がんは治療前から間質性肺炎との合併が多いことが知られています。それとの関係性について意外な事実。
タルセバとイレッサでの間質性肺炎発症率の違い
イレッサ、タルセバ、これら二つの薬剤はどちらも間質性肺炎という副作用を引き起こしますが、日本における後発薬であるタルセバには有利な点がいくつかあります。
イレッサが効かなくなった時の治療方法
肺がん治療の歴史を塗り替えたイレッサ、タルセバ。でも、肺癌はやがてこれらの薬への耐性を示します。その時にどうすればいいかの考察です。
イレッサやタルセバをもう一度使えるチャンス
イレッサ、タルセバの耐性癌が出てきたときにどうするか、そして、さらにそのあとどうするか?彼らの再登板の機会も考えられるかもしれない、という考察です。

ホーム RSS購読 サイトマップ