肺がん イレッサ タルセバ

イレッサやタルセバをもう一度使えるチャンス

スポンサードリンク

イレッサやタルセバをもう一度使えるチャンス

 

症例報告を調べていると、ときどき、おや?と思わされる症例に出合います。

 

その中で私が気になるのは、

 

「イレッサが効かなくなった人にタルセバが効く」

 

あるいはその逆で

 

「タルセバが効かなくなった人にイレッサが効く」

 

という症例です。

 

 

遺伝子変異レベルでそれが確認されているのがEGF受容体におこった新たな変異の場所による違いです。

 

ゲフィチニブ治療が効いていたのにしばらくして耐性化、その後、薬剤をエルロチニブに変えたら再び奏効したという症例報告。

 

このときにはゲフィチニブ耐性の機能が、もともと持っていたL858R の変異に加えL747S変異が生じていたことによるとされています。

 

J Clin Oncol. 2008;26:1182-1186.

 

 

一方で、エルロチニブで治療が奏功していたのに耐性化、引き続きゲフィチニブを使ったら有効であったケース。

 

こちらでももともと持っていたのはL858Rですが、それに、E884K変異が加わっていたというのですね。

 

Nat Clin Pract Oncol. 2006;3:50-57.

 

 

つまり、耐性獲得変異がEGFR遺伝子の中に追加で発生した変異であり、かつ、その変異の種類によっては

 

イレッサ→タルセバ

 

タルセバ→イレッサ

 

という切り返しが有効であるケースもあるということです。

 

 

しかし、これらの変異は多いものではなくて、イレッサなどを使用中にEGF受容体に発生する変異で最も多いのはT790Mという変異で、耐性獲得癌の半数がこの変異を持つと考えられています。

 

この変異はEGF受容体の構造を大きく変える変異であり、分子標的薬がどちらも結合できなくなります。

 

この場合はイレッサが効かなくなったあと、タルセバも効きませんし、逆もまた同じです。

 

次の一手はプラチナダブレット、入院して点滴する抗がん剤治療が主流となります。

 

 

 

耐性獲得にはほかにもメカニズムがあります。

 

次に多いメカニズムで知られているのがc-Metという、HGF受容体分子の発現が増幅するものです。

 

EGF受容体とHGF受容体は細胞内では共通する信号伝達経路を活性化できることが知られています。

 

EGF受容体が抑えられた分を、c-Met発現を亢進させて生き延びようというのが癌の戦略なわけです。

 

 

こちらはc-Metの機能を阻害する分子標的薬が開発されて、タルセバに組み合わせてこれを使うことでタルセバ単独よりも良い効果、あるいは耐性株にも有効であることが確認されています。

 

こちらは遠からず、タルセバの次の一手として市場に出てくるでしょう。

 

 

 

そして、私が期待しているのが、プラチナダブレットの次にもう一度イレッサやタルセバを使えるかもしれないという選択肢です。

 

平岩正樹先生の抗がん剤戦略の本に詳しいのですが、

 

「癌に対する抗がん剤はできるだけ数がある方が好ましい。

 

 多ければ多いほど、組み合わせが増えるので、一度耐性となったがん細胞でも組み合わせ次第では叩ける。

 

 ほかの抗がん剤を何種類か試した後で、再び最初の抗がん剤が有効になることもある。」

 

という報告です。

 

「一度耐性を獲得したがんを次の薬剤でたたくと、再び主流を占めた癌は最初の薬剤でまた叩けることがある」

 

ということですね。

 

 

イレッサ→カルボプラチン+パクリタキセル→タルセバ→カルボプラチン+イリノテカン→タルセバ

 

治療に耐える体力は必要になりますが、回し回し薬剤を使用していくことで、イレッサ以降を少しでも長く伸ばせるのではないかと考えます。

 

そうしている間に、イレッサやタルセバの弱点を補う分子標的医薬が完成すれば、さらに長く人生を楽しむことができます。

 

 

参考図書

 


ドクター平岩正樹の抗癌剤治療がよくわかる本

 


抗癌剤―知らずに亡くなる年間30万人 (祥伝社新書 (001))

 

 

これらの本は平岩氏の週刊誌連載企画をまとめたものなので読み物としてはやや冗長な部分がありますが、参考になるポイントもたくさんあります。

 

日本では欧米に比べると適切な抗がん剤治療が行われていない、その理由が行政側の裁量にあることなども書かれています。

 

草の根から医療を変えていくために、医者だけでなく患者さん側も一読しておかれることをお勧めします。

スポンサードリンク

イレッサやタルセバをもう一度使えるチャンス関連ページ

イレッサで間質性肺炎が起こるメカニズム
イレッサでどうして間質性肺炎が起こってしまうのか、それはEGF受容体機能を抑え込まれた肺がん細胞が生き延びるために大量生産するサイトカインにあるかもしれない
ステロイドの同時投与で間質性肺炎発症を防ぐ
イレッサ、タルセバで引き起こされる間質性肺炎、これの発症を抑えながら使い続ける方法についての考察です。
間質性肺炎が起こりやすい肺癌のタイプ
分子標的医薬であるイレッサ、タルセバで引き起こされる間質性肺炎、でも、肺がんは治療前から間質性肺炎との合併が多いことが知られています。それとの関係性について意外な事実。
イレッサ誘導性間質性肺炎と免疫細胞
イレッサで誘導される間質性肺炎ははいの間質細胞の活性化と線維化が中心ですが、そこに大きくかかわってくるのが免疫系の細胞です
タルセバとイレッサでの間質性肺炎発症率の違い
イレッサ、タルセバ、これら二つの薬剤はどちらも間質性肺炎という副作用を引き起こしますが、日本における後発薬であるタルセバには有利な点がいくつかあります。
イレッサが効かなくなった時の治療方法
肺がん治療の歴史を塗り替えたイレッサ、タルセバ。でも、肺癌はやがてこれらの薬への耐性を示します。その時にどうすればいいかの考察です。

ホーム RSS購読 サイトマップ