イレッサ 間質性肺炎 遺伝子変異

間質性肺炎が起こりやすい肺癌のタイプ

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間質性肺疾患が合併している肺腺癌ではEGF受容体の変異が少ない

 

間質性肺炎とイレッサとの関係について示唆に富む報告をご紹介します。

 

イレッサで引き起こされる間質性肺炎と、もともと、治療前の肺がんに合併している間質性肺炎との関連性がなさそうだという報告です。

 

(正確にいうと関連性がなかったのをイレッサが引き寄せてしまう可能性はあるのですが。)

 

 

 

このサイトでは何度も書いていますが、EGF受容体の機能獲得型変異分子の機能を効率よく抑え込むことのできる分子標的薬のひとつがゲフィチニブ(イレッサ)です。

 

残念ながら、投与された患者さんの数パーセントで、致死的な副作用である間質性肺炎が発症します。

 

 

ところがその一方で、もともと、肺がんの患者さんでは、治療前からしばしば間質性肺炎が合併していることが知られています。

 

そのことから、イレッサの副作用で間質性肺炎を発症した患者さんでは、イレッサ投与前から間質性肺炎や、それに関連する疾患が潜んでいたのではないかという考え方があります。

 

もともとハイリスクの人だったから、副作用も起こりやすかったのだろうという考え方ですね。

 

 

この考え方、部分的には正解で部分的には間違いであるとして、改めなくてはならないかもしれません。

 

参考にしたのは以下の論文です。

 

 

Lung Cancer. 2013 May;80(2):159-64. doi: 10.1016/j.lungcan.2013.01.017. Epub 2013 Feb 16.

 

Preexisting interstitial lung disease is inversely correlated to tumor epidermal growth factor receptor mutation in patients with lung adenocarcinoma.

 

Fujimoto D, Tomii K, Otoshi T, Kawamura T, Tamai K, Takeshita J, Tanaka K, Matsumoto T, Monden K, Nagata K, Otsuka K, Nakagawa A, Hata A, Tachikawa R, Otsuka K, Hamakawa H, Katakami N, Takahashi Y, Imai Y.
Source

 

Department of Respiratory Medicine, Kobe City Medical Center General Hospital, Kobe, Japan. daichi@kcho.jp

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23419507

 

 

日本人の肺腺癌患者ではイレッサが有効なEGF受容体の機能獲得型突然変異を持つ人たちが一定割合で存在します。

 

はたして、このEGF受容体に変異を持つ方たちでは、もともと治療前から肺の間質性疾患の罹患率が高かったのかどうかについて調査が行われました。

 

結果は驚いたことに、EGF受容体に変異を持つ方たちでは、むしろ肺の間質性疾患を持つ率が低かったというものでした。

 

 

555人の肺腺癌の患者さんでEGFRの変異は246人(46%)に見つかりました。

 

555人の患者さんのうち、抗がん剤での治療前から肺間質性疾患を持っている人は31人(6%)でした。

 

この内訳を調べると、EGFRに変異を持たない人では309人中30人(9.7%)が肺間質性疾患を持っていたのに対して、EGFRに変異を持つ人で肺間質性疾患を持っていたのは246人中1人だけ(0.4%)でした。

 

 

つまり、抗がん剤未治療状態にあるときには

 

「肺がんのEGFRの機能が活性化した患者さんでは間質性肺疾患がほとんど起こらない。」

 

のです。

 

逆に言えば、抗がん剤未治療状態にあるときには

 

「肺がんのEGFRの機能が活性化していない患者さんでは10%の確率で間質性肺疾患が起こる。」

 

とも見て取れます。

 

 

・・・長くなったので続きはこの次の記事で

肺がんのEGFRの機能が活性化していない患者さんでは10%の確率で間質性肺疾患が起こる。

 

 

・・・これ、どういうことでしょうか?

 

別の記事で紹介した、「EGFR機能阻害剤を投与されたがん細胞は炎症性サイトカインであるIL-6を産生する」という論文を併せて考えてみれば、わかりやすい仮説が立ちますね。

 

 

 

肺がん細胞はどんどん増えようとします、これがまず前提です。

 

そのときにEGF受容体の機能が活性化していれば、それだけでどんどん機嫌よく増殖しています、肺の線維芽細胞に何も悪さを仕掛けません。

 

 

ところが、EGF受容体の機能が普通の人と同じであれば、癌細胞としては、それだけでは増えるのにパワーが足りません。

 

だから、EGF受容体だけでは足りないパワーを補うためにIL-6をたくさん産生して、自らの発現するIL-6受容体を介して増殖シグナルを入れます。

 

その過剰に産生されたIL-6により、癌の周囲の線維芽細胞が刺激されてfibrosis、線維化を引き起こします。

 

これにより、EGF受容体に変異がない患者さんの10%近くには間質性肺疾患が引き起こされます。

 

 

一方、EGF受容体の機能が活性化して機嫌よく増殖していたがん細胞、この子たちが、患者さんがイレッサを飲むことで、EGF受容体の機能を抑えられたとします。

 

すると、癌細胞はEGF受容体が働かなくなったために発生した増殖パワーの不足を補うために、やはりIL-6をどんどん産生し始めます。

 

これにより、イレッサを投与された患者さんの癌細胞周囲の線維芽細胞はいきなり大量のIL-6による刺激を受けることになります。

 

このため、イレッサを投与された患者さんの数%では致死的な間質性肺炎が引き起こされます。

 

 

と、こういう風に考えることができます。

 

 

また、もともとの「間質性肺疾患の起こりやすさの訴因である個人差、体質」というものについても考えることができます。

 

 

「EGF受容体に変異がない患者さんの10%弱でイレッサなしで間質性肺疾患が起こる。」

 

「イレッサを投与された患者さんの数%で間質性肺疾患が起こる。」

 

このことはつまり、

 

「日本人の数パーセント(最大で10%)は、がんや自己免疫により、肺で炎症性サイトカインの発現が亢進した時に、間質性肺疾患を起こしやすい体質をもともと持っている。」

 

それを示唆している事実である。

 

 

そういう風に考えることもできます。

 

 

 

ここに書いた考察、実にわかりやすいアイデアだと思うのです。

 

ただし、これは複数の論文を見て私が考えた仮説であり、証明されているわけではありません。

 

また、イレッサの副作用の間質性肺炎を避けたいと考えている患者さんにとってはあまり役に立ちませんね。

 

どうもすみません。

 

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